フォロー

――おれは間違って生れた。と甲斐は心のなかで呟いた。けものを狩り、樹を伐り、雪にうもれた山の中で、寝袋にもぐって眠り、一人でこういう食事をする。そして欲しくなれば、ふじこやなをこのような娘たちを掠って、藁堆や馬草の中で思うままに寝る。それがおれの望みだ、四千余石の館も要らない。伊達藩宿老の家格も要らない、自分には弓と手斧と山刀と、寝袋があれば充分だ。――それがいちばんおれに似あっている。【樅の木は残った】

· · 山本周五郎作品より · 0 · 0 · 0
ログインして会話に参加
Nightly Fedibird

Fedibirdの最新機能を体験できる https://fedibird.com の姉妹サーバです