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いま益村家の庭は秋のさかりで、別棟になった数寄屋のまわりにある杉林の、黒ずんだ緑のあいだから、若木の楓のみごとに紅葉した枝の覗いているのが、朱を点じたようにあざやかに眺められた。池のまわりにある芒はみな穂をそろえているが、風がまったくないので、その穂はみなひっそりと、秋の午前の陽ざしをあびたまま動くけはいもなかった。【滝口】

· · 山本周五郎作品より · 0 · 0 · 0
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