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お美津は正吉の腕を執って引き寄せた、二人の体がぴったりと触れ合った。――土蔵の中は塵の落ちる音も聞こえそうに静かだった、梅雨明けの湿った空気は、物の古りてゆく甘酸い匂いに染みている。正吉は腕を伝わって感じるお美津の温みに、痺れるような胸のときめきを覚えながら、こくりと唾をのんだ。【お美津簪】

· · 山本周五郎作品より · 0 · 0 · 0
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