1日に4回ほど、山本周五郎(1903〜1967)作品から独断的恣意的引用をお届けします。text 鋭意増量中。やっと100 text を超えました。長文多いです。ご容赦願います。ほぼほぼ青空文庫など、無料で読める作品ばかりです。TLの賑やかしに、おじゃまでなければ、フォローお願いします。#日本文学HP…https://yamabot.jimdofree.com/
「にっぽんかいびゃく以来、あんなお人好しのおたんこなすは見たこともねえ」と男たちは云った、「おれっちがかいびゃくこのかた生きて来たわけじゃねえにしろさ」【季節のない街】#fedibird #日本文学
「主従とか夫婦、友達という関係は、生きるための方便か単純な習慣にすぎない、それは眼に見えない絆となって人間を縛る、そして多くの人間がその絆を重大であると考えるあまり、自分が縛られていることにも気がつかず、本当は好ましくない生活にも、いやいやひきずられてゆくんだ」 「おれはそんなふうに生きたくはない」【天地静大】水谷郷臣#fedibird #日本文学
職人としてもまだいちにんめえにはなっちゃいねえ、――さぶ、おめえの気持はよくわかるが、おれたちにいま大事なのは自分のことだ、ここ二、三年でおれたちの一生がきまるんだ、 【さぶ】栄二#fedibird #日本文学
「覚えていらっしゃい、――小松はきっとあなたを自分のものにします、たとえ死骸にしてでも、きっとあたしのものにしてみせます、ようございますか」【正雪記】小松#fedibird #日本文学
「人を殺しても悪かったと一度も思わぬような奴は、やくざの気風かも知れぬが、人間じゃあない犬畜生だ、犬畜生を親の敵と狙う私じゃあありません──だが、悪い事をしたと後悔して、人らしくなればお父さんの仇、今こそ恨みを晴らさなければなりません、甲府の小父さん──放して下さい」【無頼は討たず】半太郎#fedibird #日本文学
「――こんどのことは、まったく新しい出発なのだ、まえの年の例などを考えてはいけない、当面の事実だけを処理することだ、これだけはここではっきり云っておく、去年の花は今年の花ではない、それを忘れないでくれ」【ながい坂】#fedibird #日本文学
おまえはいい子だよ、本当に可愛い、いい子だよ、一と言で云えば、かあさんはおまえの死ぬまで生きていたいと思う、しっかりするんだよ敏夫、世の中には金持になる人もあり、有名になる人もある、でも人間はそれだけじゃないだろう、おまえにはおまえの一生があるんだし、それは誰にもまねのできることじゃない、たとえ失敗のし続けにせよ、人間が生きてゆくということは、それだけでも立派なことじゃないか、おまえはおまえなりに生きておいで、人がなんと云おうと構いなさんな、おまえの一生はおまえだけのものなんだからね【ばちあたり】#fedibird #日本文学
「人間はね、善良であるだけでは、いけないんだ、善良であるためには闘わなければならない、単に善良であるというだけでは、寧ろ害悪でさえあるというべきなんだぜ」【火の杯】近田紳二郎#fedibird #日本文学
「人間というものは」と宗岳も茶碗を取りながら云った、「自分でこれが正しい、と思うことを固執するときには、その眼が狂い耳も聞えなくなるものだ、なぜなら、或る信念にとらわれると、その心にも偏向が生じるからだ」【ながい坂】#fedibird #日本文学
「眼先の事ですぐによろこんだり、絶望して身を滅ぼしたりする例は貧しい人間に多い、恒産なければ恒心なしといって、根の浅い生活をしていると、思惑の外れた場合などすぐ極端から極端にはしってしまい、結局、力のある者の腹を肥やすだけだ」【赤ひげ診療譚 おくめ殺し】 新出去定#fedibird #日本文学
「こう云っちゃあ済みませんが、お父さんの死んだのはやくざ渡世の自業自得、御定法の裏をぬけて、世間の道を踏外した者同志の斬った張ったは、堅気の者に関わりのない事です。人を殺しても──悪かったと一度悔むことのないような者は人間じゃあありません、人間でない者を相手に敵だ仇だと云ったところで始まりませんからねえ」【無頼は討たず】半太郎#fedibird #日本文学
「──意地や面目を立てとおすことはいさましい、人の眼にも壮烈にみえるだろう、しかし、侍の本分というものは堪忍や辛抱の中にある、生きられる限り生きて御奉公をすることだ、これは侍に限らない、およそ人間の生きかたとはそういうものだ、いつの世でも、しんじつ国家を支え護立てているのは、こういう堪忍や辛抱、──人の眼につかず名もあらわれないところに働いている力なのだ」【樅の木は残った】原田甲斐#fedibird #日本文学
「他人の仕事は容赦なくけなしつける、たぶん本当に絵のよしあしはわかるんだろう、けれども彼がしんじつ絵師であるなら、他人の絵などに関心はもたず、自分の絵を描くことにだけ全身をうちこむ筈だ、人は人、自分は自分なんだ、彼は実際に絵を描くよりも、あたまの中で絵をもてあそんでいるだけじゃないか、そんなことなら誰にだってできることだよ」【虚空遍歴】中藤冲也#fedibird #日本文学
──自分だけの幸福は幸福ではない。夏子はそう信じていた。──大多数の人間が不幸であるとき、自分だけが仕合せだということは、悪徳であり寧ろその大多数よりも遥かに不幸である。【火の杯】#fedibird #日本文学
ゆるすということはむずかしいが、もしゆるすとなったら限度はない、――ここまではゆるすが、ここから先はゆるせないということがあれば、それは初めからゆるしてはいないのだ 【ちくしょう谷】隼人#fedibird #日本文学
躄車に乗って残飯をねだるのも、他人の家のごみ箱をあさるのも、その当人がしているのではなく、生きているいのちに支配されているだけではないか。生命という無形のものが人間を支配して、あのようにみじめなことをしても死に至るまで生きようとさせるのではないだろうか、と冲也は思った。「そこにはもうかれら自身はないのだ」と冲也は独りで呟いた、「——躄車で残飯をねだっているのはいのちだけで、老人そのものはそこにはいない、人間としての老人はもうその肉躰から去って、虚空のどこかをさまよっているんだ」【虚空遍歴】中藤冲也#fedibird #日本文学
月はかなり西に移ってい、空には雲の動きも見えた。岸の草むらでは虫の鳴く音がしきりに聞え、微風が芦をそよがせると、葉末から露がこぼれ、空気がさわやかな匂いに満たされた。雲が月のおもてにかかると、そのときだけはあたりがほの暗くなるが、雲が去ると、これらの風景ぜんたいが、明るくて青い、水底の中にあるように眺められた。 【青べか物語 芦の中の一夜】#fedibird #日本文学
男が一生を賭けた仕事に、あせってやってできるようなものがあるか、おれはこれまでに幾たびも失敗した、これからも失敗するだろうと思う、しかしね、失敗することは本物に近づくもっともよい階段なんだよ、みていてくれ、おれはこんどこそ本物をつかんでみせるからね 【ながい坂】三浦主水正#fedibird #日本文学
「おんなしこったに、たとえおめえらがいって来るにしろ、めんどくせえこたあやっぱりめんどくせえでねえ、おら他人がやるにしろ、めんどくせえこたあでえ嫌えだに」【似而非物語】杢助#fedibird #日本文学
罪は人間と人間とのあいだにあるもので、法と人間とのあいだにあるものじゃない、——が、そんなことはどっちでもいい、人間ていうやつはみんな愚かなものだし、生きるということはそれだけで悲惨なものさ、ちえっ【栄花物語】信二郎#fedibird #日本文学
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