悠二郎は父が案外な手ぬかりをしているのを発見した。それはなにかというと、父は大事にするあまり、金魚どもの鰭や尾が伸びすぎているのに気がつかない、だからそいつらは鰭や尾が邪魔になって、満足に泳ぐことができないのである。――まるで赤ん坊が振袖でも着たように、躯をくねくねさせ、のたのたした草臥れたような恰好で、重たそうにやっとこさ泳ぐのである。悠二郎はそいつらが可哀そうになった。そこで鋏を持って来て、一尾ずつ捉まえて、その伸びすぎた鰭や尾をちょうどいいくらいに切ってやった。――そうして七尾めを切ってやっていたとき、団栗まなこの黒板権兵衛にみつかったのである【桑の木物語】#fedibird #日本文学
1日に4回ほど、山本周五郎(1903〜1967)作品から独断的恣意的引用をお届けします。text
鋭意増量中。やっと100 text を超えました。長文多いです。ご容赦願います。
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